妊娠・出産

専門医インタビュー

不妊治療について

――不妊治療の流れは?

最初に検査をします。人間の大切な体ですし、人間の子ができる話で、100%完璧な検査というのは残念ながらありません。 ①排卵しているか、②精子はいるか、③卵管が通っているか、をまず調べます。 検査結果で「問題が見つからない」という方が多いんですが、問題がない=完璧に正常、ということではなく、できる検査の範囲内では異常はなかった、 というだけのことなのです。つまり、原因がはっきりしないのです。 そのために治療は大事そうなところから少しずつ進めていきます。 その過程は、場合によってはとても長く感じるかもしれませんが、どれもが必要なステップです。 希望に向けての一歩を踏み出してほしいと思います。

精子がいない、排卵していない、卵管が通っていないなど、原因がはっきりしている場合は、途中の段階をスキップして進むこともあります。

――初診・検査ではどんなことをするの?

初診では、時間を十分にとってカウンセリングをし、検査の説明をします。

不妊については、まだまだ分かっていないことが多いというのが本当のところです。 さらに、人の体は千差万別。ですから、不妊治療を進めるに当たっては、ひとつひとつ考えられる問題点をクリアにしていくという方法がとられます。

そして、風疹の免疫やがんなどを調べたりします。これらは、直接妊娠に関わるわけではありませんが、妊娠成立後のことを考えて行います。

――タイミング法について教えてください。

タイミング法とは、排卵日を予測してタイミングをとることで妊娠する確率をあげるという方法です。
「タイミング法を試してみたい」「排卵のタイミングを教えてください」と言われることがよくあります。 教えるのは構わないのですが、逆にそれでプレッシャーがかかり調子が悪くなるカップルが少なくありません。
「排卵日にはこだわらないで!」とお話するのですが、女性の中には「排卵が終わってからでは無駄でしょう」とおっしゃる方もいらっしゃいます。 そう言われると、男としては立場がないのですが、旦那さんは奥さんともっと仲良くしたいかも知れません。 精子は何日も生きているので、あまり排卵日にこだわり過ぎないで、とお話ししたいですね。

――人工授精について教えてください。

受精しやすいタイミングを合わせて、精子を子宮内に注入するのが人工授精です。 このとき、排卵された卵子が卵管に拾われて入ってきているかどうかは分かりません。 実は卵子は何か月に1度しか卵管に取り入れられないのではないかと考えられています。 精子を入れても、卵子がこなければ受精には至りません。精子と卵子が出あうというのは、 何回かに1回しかおこらないことなんですね。

――腹腔(ふくくう)鏡検査・体外受精・顕微授精について教えてください。

腹腔鏡検査は、おなかの外から1cm前後の穴をあけ、おなかの中をみる検査のこと。 卵管、卵巣、癒着などを直接観察できるのが特徴です。 この検査については、ドクターの考え方によって違いがあるので、必ず行うというわけではないと思います。 腹腔鏡検査は、子宮内膜症や卵巣嚢腫やひどい癒着が考えられるときに行うことがあります。 これに類して卵管鏡検査をすることがあります。 膣の方から細い内視鏡を入れ、卵管の中を見ながら、卵管が通っていないときは治療も行います。 卵管が通っていればそれでいいという訳ではないので、残念ながら県内で行っているところはありません。 県外の病院や医院をご紹介することになります。これでうまくいけば、1人目、2人目と妊娠できるケースもあります。 腹腔鏡も卵管鏡も試してみてから半年くらいは様子を見ます。
最近では、6回ほど人工授精を試してダメだったら体外受精に進むことも多くなってきました。 体外受精とは、子宮内から取り出した卵子を体外で受精させ、受精卵を培養した後に子宮に戻す治療法です。

この方法での妊娠率があがったこと、助成金が出るようになったこと、入院の必要がない、などが注目されている理由です。 精子が少ないなど自力での受精が難しいと思われる方にもおすすめしたい方法です。

体外受精の良いところは、妊娠に必要な精子と卵子の両方を手にいれるというところです。 たとえば人工授精やタイミング法だと、卵子は排卵しているけれど精子とはすれ違っているのかもしれない。 けれども体外受精は、精子と卵子を確実に出会わせることができます。何日か様子を見ることもできます。 また、卵子も100%カンペキではないようで、すべての卵子が子供になれるわけではないんです。 たとえば8つとか卵子をとることによって、候補が増える。 それぞれ精子に入ってもらってよさそうなものを戻すことができるのです。 病院によっては、たくさん排卵させるのは体にやさしくないと考えるところもあるし、 得られる卵子が少ないと妊娠率が低いからある程度の数の排卵は必要というところもあります。

顕微授精は、顕微鏡で見ながら卵子の中に直接精子を注入する方法です。 精子の数が少なかったり、運動率が低かったり、卵子の受精力が弱くて自然受精ができなかったりする場合、 受精をサポートできます。

精液検査の結果が良くても体外受精で受精に至らない場合、顕微授精に移ります。

――治療を行うに当たって病院はどんな基準で選んだらよいですか?

治療は一度限りのものではありませんから、距離的にも経済的にも「無理のないこと」がポイントだと思います。
通いやすいかどうか、治療面で納得できるかどうかを検討すると良いでしょう。 治療前に複数の人に相談するのもおすすめです。 ご本人は「妊娠する」ことにこだわりすぎて視野が狭まってくることもあります。 そんなとき、第三者の冷静な判断は、頼りになるものです。

――不妊治療の助成金について教えてください。
助成金制度

群馬県には、体外受精や顕微授精など、保険適用外の特定不妊治療を受ける夫婦に対し、 治療費の一部を助成するという制度があります。市町村でも助成金制度を設けているところが多いです。

――不妊治療で落ち込んだ時、気持ちを立て直すには?

妊娠したらラッキー!と思うことでしょうか。 いろいろな要素がうまくかみ合って初めて妊娠に至ります。 条件が完璧でも、必ず妊娠するとは限らないのです。
期待が大きいと、うまく進まない時のショックが大きくなります。 あまりそればっかり考えない方がいいんですが、そう言えば言うほど袋小路に入ってしまうんですよね。
打てば必ずホームランがよいのでしょうけれど、一生の間でホームランは2~3本打てれば、とお話ししています。 私たちも引き続き、一生懸命やらせていただいています。
このようなことから考えても、トライするのが早いとチャンスの数も多くなる、ということは言えると思います。

――将来、妊娠を希望する人が今から注意しておくべきことは?

コンドームを使うこと。若いときにクラミジアにかかって卵管が通っていないという方はいくらでもいらっしゃいます。 避妊ということだけでなく、病気を予防するためにもぜひ使用してほしいと思います。

あとは早く「いい人」を見つけることでしょうか(笑)。

――どんな方針で治療をしていますか?

基本的には、最初に申し上げた3つの項目を検査するということですね。

あとは、ケースバイケースですが、重要なのは年齢。 その他ご本人の治療に対する考え方や、どれだけの期間できなかったかなども治療を進めるうえで大切なポイントとなります。

――不妊治療は仕事との両立が大変という意見がありますが、クリニックとして工夫をしていることやアドバイスはありますか?

休みの日も治療が受けられるようにしています。できることは一生懸命やっています(笑)。

工夫というのではないかもしれませんが、私でなくても、看護師や職員に気持ちを話してくださるのも良いことだと思います。 気持ちを吐きだせるというのはとても大切だと思いますね。

――両毛地区は、指定医療機関が少ないと感じますが、県外や太田市以外の通院者はどのような状況ですか?

佐野や行田など県外の方もいろいろいらっしゃいます。

――産婦人科医になられて、どんな時によかったなと感じますか?

やっぱり「子どもができた」というときですね。

そして「生まれました」と連れてきてもらって、赤ちゃんをこの手に抱かせてもらうときはとても幸せです。

――(補助制度の拡大以外で)行政や社会に期待することは何ですか

若い年代の雇用がしっかりしないと、お子さんはできませんよね。落ち着いて子どもが作れる環境があるといいですね。

時澤 俊也(ときざわ としや)
群馬大学、太田市内堀江病院勤務を経て、群馬県太田市に不妊クリニック「ときざわレディスクリニック」を開業。 体外受精・顕微授精・不妊相談等、多くの不妊治療に携わる。

ときざわレディスクリニック
群馬県太田市小舞木町256
0276-60-2580
http://tokizawa.jp/